0818  命日

 やっぱりキミには会えないのだと私は落胆する。キミが天に昇ってしまってから私は毎年この日この時間に空を見上げているのに、星になったキミを一度も見たことがない。
 キミは私を覚えてくれているだろうか。時間に追い立てられ、キミの記憶が少しずつ消えてしまっている。そんな私を許して欲しいというつもりはないけれど、今の私には、キミの記憶で胸をいっぱいにするほどの余裕がない。そのくせキミには私を忘れてほしくないだなんて、私はなんて酷い女なのだろう。
 どうかそこから私を見下ろしていてほしい。私の生き方を、この先選ぶ全ての決断を見届けてほしい。キミに見守られて、私はキミの分まで生きていきたいのだ。



 0820  限界

 私は今まで、自分は何をやってもそれなりに平均以上はやれる人間だと思っていた。どんな仕事に就いても、どんな趣味を持っても、極めるまでは行かなくてもある程度こなせていた。才能があるとは思っていない。人より努力をすれば平均以上にはなれると信じていたからこそ、こつこつと地道に経験を積んできただけだ。
 どんなに努力をしていても、全く実らないこともあるのだと最近知った。



 0822  戦うということ

 胸の痛みが取れない夜は、出来るだけ何も考えないように努める。静かな音楽を流したり眠ったりして、胸の痛みを忘れようとする。けれど、そんなことをしても結局状況は何も変わっていなくて、ただ逃げていた時間が無駄に流れただけだったと後で気付く。
 わかってる。私はただ正面から向き合う努力を怠っているだけだということを。逃げちゃ駄目なんだ。



 0828  泣いてなんかいない

 雨が降るといつも思い出す。お気に入りの赤い長靴を履いて雨の中を走り回っていた少女の頃の記憶。水溜まりに映った自分の姿は、本当は自分ではなく、自分によく似た地面の下に存在する世界の住人だと思っていた。楽しかった日々。ただ笑っているだけで毎日が過ぎていった。
 雨粒が瞼の上で弾け、私は現実に引き戻される。まるで私に思い出に浸る時間を与えないために落ちてきたのではないかと思える。どうしてだろう。楽しい過去と辛い現実を比べたって何の得もないことはわかっているのに、なぜ私はそんな記憶を手繰り寄せようとするのか。
 瞼に着地した雨粒は私の睫毛を濡らし、頬を伝って流れる。大丈夫。これはただの雨粒だ。