1105  キミによく似たあの子

 仕事の帰り道にいつも私が通り過ぎるのを待っている猫がいた。私は気まぐれで、買い物袋の中から食べ物を取り出し、猫に与えた。それから毎日その子は私の帰りを待つようになった。私の帰りが遅かったり、雨が降ったりしていると会えないこともあったけど、ほぼ毎日私はその子と夜の道端で戯れた。
 その子の姿が見えなくなってもうすぐ1ヶ月。最初の1週間はただ単にタイミングが合わないのだろうと思っていたけれど、さすがにこんなに見かけないと最悪の状況を考えるのは当然のことだろう。あの子はキミのいる世界へ行ってしまったんじゃないのか、と。キミが私の腕の中で息絶えた日のことを思い出す。あの時はキミにもっとしてあげられることがあったのにと悔やんだけれど、今では、キミの最期をしっかりと見届けてあげられたことを良かったと思っている。もしもキミのいる場所へあの子が旅立っていってしまったのだとしたら、あの子の最期を誰か見届けてあげたのだろうか。それがとても気がかりだ。



 1117  子守唄

 静まり返った部屋でお気に入りの歌を口ずさんだ。ふとキミを思い出す。キミは私が歌うとすぐに隣にやってきて、喉をごろごろ鳴らしながらウトウトするのだった。私はキミを起こしてしまわないように声のヴォリュームを落として、キミが寝息を立てるまで歌い続けた。
 キミがすぐ寝てしまう歌があった。原曲よりぐっとテンポを遅くして甘く囁くように歌うと、キミはいつもあっという間に眠ってしまった。キミを思いながら久しぶりにその歌を口ずさんでみる。空の上のキミに、この歌は届いているだろうか。
 日付が変わって1時間。私もだんだん眠くなってきた。この歌は私にとっても子守唄だったらしい。