0702  全て君の所為にしておく

 君の切なさは次々と私の中に注ぎ込まれる。私は気が遠くなりそうになりながらも必死で正気を取り戻そうとする。君に溺れていく自分を制し、どうにかして心の均衡を保とうとするのだけれど、君がちらちらと私の脳裏を横切ってそれを邪魔する。
 もういっそ、完全に君に溺れてしまってもいいかもしれないと思う。



 0705  空から大粒の涙

 雨粒が私の頬を打つ。まるでぶたれているような激しい痛み。傘を持たない私は、雨の容赦ない平手打ちに抵抗出来ないでいる。
 空から大粒の涙。私が犯した罪を天が裁く。裁きに耐えた私は許され、私の罪は雨によって流されていく。天は私の愚行を嘆いて泣いているのだろうか。それとも慈悲の涙なのか。
 雨はまだ止まない。私の穢れは今、浄化されつつある。



 0724  頬染めて、微笑んで。

 私は君に初めてその言葉を伝えた。
 似たような意味合いの言葉は何度も口にしたことがある。けれどそれらは曖昧で、あまりにも遠回しな表現だった。ところが何故か昨日は無意識に言ってしまったのだ。今までずっと言わなかった、言えなかった言葉を。
 咄嗟に視線を逸らす。私の頬が紅潮しているのに、君は気付いただろうか。



 0726  溶けていく月を抱いて

 シーツの波間で寝返りを打つ。寝苦しい夜は溜息ばかりが増えていく。私は我慢出来ずに、体を冷やそうと、目の前にあった氷に手を伸ばした。カーテンの隙間からは、徐々に雲に隠されて姿を消していく三日月が見えた。
 体温は少し下がった。キャミソールの胸元が水滴で濡れている。私は溶けた氷を見た。三日月の形をしていた。まさか私の手は空まで伸びたのだろうか。
 私はそんな自分の妄想を愛おしく思いながら目を閉じた。氷の月を抱いて私は眠る。さっきまで闇に浮かんでいた月は、もう既に闇に溶けて消えていた。