0502  愛しい君に乾杯

 私の体をなぞる君の細くて長い指はとても意地悪。私の願いを知っているくせに、なかなか私を満たそうとはしてくれない。ねえ、お願い。お願いだから。私にそう言わせるまで意地悪を止めない君を恨めしく思いながらも、結局私はそんな君を許してしまっている。 
 この私にそんなことを言わせようだなんて、君はなんて容赦ないんだろう。けれど、君に許しを乞う言葉が私の喉まで出かかっている。ああ、君に完敗。



 0509  覚めた夢、醒めない夢

 君は私の目の前で別の女を抱いていた。私にするようにその女にも優しく囁いて、壊れ物でも扱うように大切に触れていた。私はその光景をただ呆然と眺めていた。女は歓喜の声を漏らし、私を挑発していた。
 やっぱり男なんて信用しては駄目なんだ。そう思った瞬間、目が覚めた。夢だった。そして私は、泣いていた。
 外はいい天気だった。今日も暑くなるだろう。夢から覚めて君が他の女を抱いているところを想像すると、私は胸が痛んで声を出して泣いた。



 0518  病める時も、健やかなる時も。

 悲しくて泣きたい時、悔しくて大声で叫びたい時、苦しくて何もかも投げ出してしまいたい時。私は今までずっと、自分だけが耐えればいいのだと思って我慢してきた。それなのに君ときたら、私が悲しむと一緒になって泣くし、辛いことがあると私と同じように苦しむものだから、私は自分の不幸を忘れて呆れ返る。
 私は我慢するのをやめた。私が苦しいと君も苦しむから、君にいつも笑っててもらうために私も笑っていようと決めた。私は初めて誰かのために自分を大切にしようと思った。



 0526  現実逃避

 私は涙を流すたびに、自分は恋をしてはいけない人間なのだと思う。
 好きな人に嫌われるのが怖い。だったらいっそ、彼が私を好きな気持ちが残っているうちに去ってしまいたい。嫌われる前にいなくなって、いつまでも覚えていてほしいと思う。解かってる。それはただ単に私の弱さだ。



 0530  追いかけてくる影

 小さな箱で出来たような町の中で、私は見えない何かに追われてどんどんと追い詰められている。私は追いつかれないように一生懸命逃げるのだけれど、それは私を逃がしてはくれない。お願いだから見逃して。それが駄目ならいっそのこと一思いに楽にして。けれど私はじわじわと追い詰められ、逃げ場を失っていく。
 角を曲がると行き止まりだった。振り返るとそれはにやにやしながら私に近付いてきている。目の前には大きな壁がある。壁を飛び越えるか捕まるか、二つに一つ。