0201  ゴミはゴミ箱へ

 吐き出され続ける私の言葉はこの場所に取り残され、徐々に埋もれていく。きっと過去の言葉なんて私しか見ない。後で読み返して、書いてある文章とその時の気持ちを照らし合わせる。その時の感情が甦ってくる。
 私以外は日々の文章が何を意味しているのか見当もつかないだろう。けれどそれでいい。ここは、人にはとても言えないような私の感情の切れ端を捨てるに丁度良いゴミ箱のようなものなのだ。



 0203  元には戻らない心

 あの頃はいつでも体当たりで、心が壊れることを恐れたことなんて一度もなかった。けれど、目に見えないほど小さな細かい傷は知らないうちに増えていて、あの日私の心は突然壊れてしまった。無謀なことをしていたことにちっとも気付かなかった。かなりの無茶をしていたことを、私は後になって知ったのだった。
 時間をかけて、私は粉々になった自分の心の欠片を拾い集めて接着剤で引っ付けた。小さな傷が付くたびにその都度応急処置してきたし、補強をすることも覚えた。だって知っていたから。あの頃のように無茶をして再び心を粉々にしてしまったら、もう二度と修復は出来ないということを。
 私は今、再び心が壊れることを恐れて、自分ごとぶつかっていく勇気が持てないでいる。



 0204  15cm

 君と抱き合った時、私は君の喉仏しか見えない。顔を上げてみる。君の唇は私の視線のずっと上にある。背が低い私は、なかなか届かない君の唇に近づこうとして背伸びをする。それが合図になり、君はゆっくりと前屈みになる。
 少し前まで、私はとても横柄だった。自分は決して動こうとはせず、君の体を無理に折り曲げさせていた。私は少し辛そうな体勢の君を見ながら平然としていた。今ではこんなに君の唇を求めているというのに。
 私が少し背伸びをして、君が少し身を屈める。背伸びする辛さも、前屈みになる辛さも半分こずつ。私達は今、こんなにも対等である。



 0205  そういう人に 私はなりたい

 一生懸命生きてる人が好きです。たとえ間違っていても自分の芯をしっかり持っている人が好きです。そして間違いに気付いたら、それを素直に認める人が好きです。自信がなくなっても最後まで諦めない人が好きです。それでもたまには悔しくて涙するような正直な人が好きです。
 だから私は諦めません。たとえ絶望の淵にいるとしても、諦めてしまったら全てが終わり。自分がそういう人間になれるよう努力する姿勢が大切なんだと思います。



 0207  変わるべきなのは私の方

 昨夜、もしかしたら君は落胆したかもしれない。けれど、気分屋な私に振り回されているにも関わらず、君はいつも笑っている。君は私を基準に一喜一憂しているように見せかけて、いつも堂々と構えている。その余裕が私は最近眩しくて仕方がない。
 君は昨日、自分は変わっていない、変わらないといけないと言った。私はちっともそう思わなかった。君はどんどん私好みの男に変わっていってる。その努力をしてくれている。相手を基準に一喜一憂しているのは、私の方なのかもしれない。



 0208  愛の種

 君の雫を愛しそうに飲み込む私を思い浮かべた。君も満足そうだった。私の中に放たれた君の情熱は、もう私の奥深くまで侵入してきている。
 絶対にそれはしないと、するのはまだまだ先と決めていたことを、君とならしてもいいかもしれないと思い始めている。



 0209  そういう君でいて

 私が拗ねると君はおろおろする。本当はそんなに拗ねてなかったんだよって切り出しにくくなるくらい、君はとっても申し訳なさそうな表情で私を覗き込む。私はそんな君を見て思わず涙ぐんでしまう。それを君は、自分が泣かせたものだと勘違いしてもっとおろおろするものだから、私はもっともっと涙ぐんでしまう。
 いつもはそんな君を、昨日怒らせてしまったのは、初めてかもしれない。笑っている私だけじゃなくて、怒りっぽい私も泣いている私も、全部好きになってほしい。



 0210  今宵の月明かり

 暗闇の帰り道、街頭の真下に立つと、まるで自分にスポットライトが当てられたように錯覚する。けれど光の筋を潜り抜けてひとたび闇に溶け込むと、迷子になった子供のように途端に不安になる。心まで闇に飲まれないように努めるので精一杯。私は光の射す方へ急いで向かう。
 まだだ。まだ向こうの方には光が見える。今ならここから抜け出すことが出来るはず。



 0214  届け、この思い。

 誰かに何かをすること自体が久しぶりで、私の心は躍る。そういう、何かすることが大好きなのに、そういうことを考える余裕が、ここ最近の私にはなかった。
 君が喜んでくれるのを想像しながら、私は一人ほくそえむ。



 0216  立ち往生

 私は立ち止まっている。後ろなど振り返らずに、ただひたすら前を見て歩いていた私は、ふとした拍子に足を止めてしまった。一度止まると再び歩き出すのには時間がかかる。私は風当たりや周囲の目を気にしながら、この場所に留まっている。
 けれど、このままでは状況は変わらないのは自分が一番解かっている。あと一歩、足を前に出すことが出来たなら、私はまた歩き出すことが出来るのだ。まずは一歩、右足を前に出そうと、今はそれだけを考えている。



 0217  幸福論

 君の喜びようを見て、私も嬉しくなった。君の笑顔を見て、私も笑顔になった。大丈夫。現状がいっぱいいっぱいの私だけれど、人の笑顔に釣られて笑える余裕が、私にはまだあった。
 もしも自分が幸福な気分になりたいなら、人を幸福な気分にさせてあげればいいのだと、少し心にゆとりが出来た私は気付く。



 0218  雲の陰に隠れている太陽

 とても悔しくて、こぼれそうな涙を必死に我慢して唇を噛んだ。それでも、悔しさは私の抑制を上回ってしまい、涙がこぼれた。涙は頬を伝うことなく靴の先っぽに落ちた。
 目は擦らない。赤くなって、泣いたことに気付かれてしまうから。唯一の救いなのは、頬が濡れていないことだった。私は、いつも太陽でいなさいという彼女の言葉を忠実に守っている。無理にでも笑うように努めることで、その笑顔はいつか本物になると信じているからだ。



 0219  愛しい睡魔

 私の髪を撫でて、私が眠るまで甘く優しく囁いてほしい。君の腕は細くて頼りないのに、何故かとても心強くて、私は君に全てを預けたくなる。
 君の体温は、たとえ私がどんなに起きていたいと思っていても、私の手を引いて夢の世界に連れ込もうとする。私は、自分はまるで魔法にかかったお姫様みたいだと錯覚する。



 0222  いまから、ここから。

 今まで少しずつ積み上げてきたものを壊さなければならない時が来た。私は、重なり合う過去の一瞬一瞬が作った小さな山を手で振り払った。過去がガラガラと音を立てて崩れる。今まで私が時間をかけて積み上げてきたものは、これで、もうない。
 本当にゼロからのスタート。私は、これで本当にリセットされた。過去の自分の栄光にすがってはならない。常に今のこの一瞬一瞬で勝負しなければいけない。



 0223  今夜も君の腕の中で眠る

 君の夢を見た。夢の中の君はとても優しく私を抱いてくれて、現実と少しも違わなかった。
 私の側にいない君は、こうして最近毎晩私に会いに来てくれる。夢と現実が入れ替わればいいと願いつつ、私は今日も夜を待ち遠しく思う。



 0225  私の睫毛にキミの涙

 昨日の昼間、牡丹雪が降った。一粒一粒が大きくて、磨り硝子のこちらからでも確認できるほどだった。窓を開けて身を乗り出す。ひんやりとした雪が私の瞼に着地する。睫毛が濡れる。
 空から降るキミの涙は、この寒さで氷結したんだ。そして結晶は結びつき、大粒の涙となって、私の瞼に舞い落ちたんだろう。大丈夫。私はキミのことを忘れた日など一度もないんだからね。