1104 見上げてごらん

 一ヶ月前の同じ時間の空は涙が滲むほどに眩しい茜色だったのに、今空を見上げると、そこには視界いっぱいに紫色の空が広がっています。あと一ヶ月したら、空はきっと真っ黒。こうやって段々色が暗くなっていくのでしょう。

 茜色の空の方が好きだったんだけどな。



 1105 夜明け前の無気力

 寒くて一度目が覚めました。カーテンを開けるとまだ少し薄暗く、太陽は昇りきっていませんでした。

 あんなに高かったモチベーションは一気に急降下して、今はもう底の底まで辿り着こうとしています。何が悪いのか解かりません。私なのか。他の誰かなのか。もしかするとその両方?私は決して手を抜いていた訳じゃないし、そのことは周りの人も知っていたはずなのに。何が狂ったのか、どうすれば修正できるのか。それは私も、そして誰も知ることは出来ませんでした。

 とにかく今は太陽が昇るのを待って、もう一眠りしようと思いました。空が明るくなってからまた考えよう。



 1107 恋愛経験値

 朝から晩までスキって言い合ってた頃に比べて、スキと言う回数は減ってきたけれど、
 朝から晩までスキって言い合ってた頃に比べて、スキと云う意味は解かってきた。



 1108 一言の躊躇

 言いたい、でも言えない、言ったら楽になるけど、まだ言うべきじゃない、けれどいつかは言わなきゃいけない、それでもなかなか言えないでいる。そんな言葉達が喉の奥で常にもぞもぞと動いていて、私に催促するのです。私の決心とは関係なく、自分達の意思で動き出そうとしているそれらを、私は沈黙を守ることで阻止しようとしています。口を開いてしまったら、きっとそれらは堰を切ったように溢れ出て止まらなくなるから。

 ああ、それでも、そろそろ限界が近づいているのが解かる。



 1109 笑顔の裏にある泣き顔

 現実で見せたほんの少しの心の声を、周囲の人は、あなたって案外暗いのねと言いました。私は一言、そうですねと返事をしました。彼女にとっては意外かもしれません。いつも大声で笑っていて、なんの悩みもなさそうに見える私の本音を聞いてしまったのだから。でも、もう自分の本音を隠すことが出来ないほどに、私は病んでいたのです。

 明るく振舞っていた方が、世間を渡っていくには何かと都合が良いのです。だから、本当の自分よりも少し無理をして、とにかく笑っていたのです。今、私が無理して笑っても、きっと誰もが私の本音を察してしまう。だからもう無理して笑う必要もなくなったのです。



 1110 ドーンパープル

 まだ夜も明けきってない空を見上げて、考えを巡らせていました。

 彼女は今、自分に「全てのことは良い方向に向かっている」と自己暗示をかけ、自分をマインドコントロールしているのだと言いました。でも、私にはどうしてもそう思うことが出来ません。このままでは、全てのことは悪い方向に向かって行ってしまうのは明らかなのですが、でも、こんな自分を制御できない。

 すっかり冷えきった頬を伝う涙は、きっと夜明けの空の色を受けて紫色に光ったのではないかと思います。



 1112 心の天気予報

 今にも泣き出しそうな空を見上げました。気持ちが弱っている時の私ならそんな空を見ただけで心にグレーの雲がかかってしまうのだけど、昨日の私は空を見ても曇りませんでした。快晴、とまではまだ行かないけれど。単純な私の心は、気持ちの持ち方次第で大雨にも青空にもなれるから。

 全てのことは良い方向に向かっている。きっと。



 1113 アビリティーの追加と削除

 高校生の時にしていたバイトで『愛想笑い』を覚えました。
 初めて男の人と付き合った時には『打算』を覚えました。
 短大生の時にしていたバイトでは『社交性』を覚えました。
 初めて年下の男の子と付き合った時には『我慢』を覚えました。
 初めて就いた仕事では『自立心』を覚えました。
 社会に出ていろんな人に出会って『体裁』を覚えました。

 いろんな人に出会って、関わって、いろんな経験をして、次々と新しいものをインストールすることで、私の機能はどんどんグレードアップしていきました。でも最近思うのです。私のスペックが追いついて行かない。もう、イッパイイッパイで。必要なものとそうでないものを区別できなくて、とにかく何でもインストールしすぎた私。自分の判断で要らないと思ったものを削除しようと思っても、どうやって削除したらいいのか判らないのです。

 それでも、今日もまた何かをインストールして帰ってくるのだろうと思います。



 1114 もっと、もっと。

 欲張りなんですワタシ。

 贅沢は出来ないけど、自分が欲しいと思った物を買える程度に収入はあるし。
 時間が有り余ってるってことはないけど、自分の趣味に時間を割く程度に暇はあるし。
 辛かったり厳しかったりするけれど、それなりに楽しくてやりがいのある仕事をしてるし。
 退屈することもあるけれど、毎日は割と充実してると思う。

 でも、まだまだ満足できないんです。もっともっと、たくさん手に入れたい。
 もっとお金も時間も欲しいし、もっとやりがいのある仕事がしたいし、もっと素敵な服を着たいし、もっと良い所に住みたいし、もっと美味しいものを食べたいし、もっと気持ちいいことをしたいし、もっといろんなことを感じたいし、もっといろんな言葉を生み出したいし、もっといろんな人と出会いたいし、もっといろんな経験をしたいし、もっといろんな人に求められたいし、もっと好きな人に愛されたい。

 贅沢なんですワタシ。



 1119 シーツの波間

 目覚まし時計のアラームが部屋いっぱいに鳴り響いて、夢の中を気持ち良く泳いでいた私は急に現実の世界に強制送還させられます。窓の隙間からは一筋の光が差し込んでいて、私の目を覚まそうとしています。それでもすぐには現実の世界に帰ってきたことを認識できなくて、暫くは夢と現実の狭間を彷徨っているのです。毎日、毎朝。

 夢の中で仕事するから、もう少し寝かせてくださいよ主任。



 1120 上手く行かない人付き合い

 まだ心を開ききっていない時、私は人に対して極端に人見知りをします。話しかけられても満足に受け答えできないし、緊張で強張った笑顔しか出来ないし。その時にちゃんと入り込んでいれば、一体何人の友人を得ることが出来ていたのでしょう。『第一印象が肝心』と言うけれど、解かっているのにそれがなかなか実行出来ません。

 もう心を開ききってしまった時、私は人に対して極端に図々しくなります。思わず心無いこと言ってしまったり、知らず知らずのうちに傷付けてしまったり。その時にちゃんと思いやりを持っていたら、一体何人の友人を失わずに済んだのでしょう。『親しき仲にも礼儀あり』と言うけれど、解かっているのになかなか実行出来ません。

 結局はバランスなんですけどね。何でもそうだと思うけど。



 1121 今、この瞬間を生きる。

 人によって、それは家族だったり、友達だったり、恋人だったりするのだけれど。

 同じ時間を共有したり、同じ目標を持って頑張ったり、お互いを愛し合ったり出来る今のこの瞬間を、すごく大切にしたいと思いました。「今」なんてすぐに過ぎてしまうから、「今」のこの気持ちに正直でありたいのです。

 大切な人は誰ですか。



 1122 お金で時間を買った日

 急いでいて、約束の時間に間に合いそうになかったので、タクシーに乗ることにしました。電車だと45分かかる距離。片道200円で行ける距離。でも、ぼんやりしながら窓の外を見ていると、あっという間に目的地に着きました。時間にして15分。2480円。

 学生の頃はバス代の180円を浮かせるために30分歩くなんてことはいつものことで、けれど時間が勿体無いと思うことはありませんでした。そんな私も今では社会人になって、金銭的に余裕が出来ると使える時間がどんどん減っていって、結局はお金で時間を買うようになりました。

 それにしても、30分って2280円もするんだなあ。



 1123 それが本音

 本当のことを知りたがる女なのです。

 誰かに何かを隠されると、私は気になって気になって仕方がない性分なのです。相手が慌てて口ごもると、一体何が言いたいのかをどうにかして吐かせようとするしつこい女です。かと言って、聞かなきゃ良かったと思うことまで聞いてしまうのは嫌で、それを言われるくらいなら隠し通して欲しいと思う天邪鬼な女です。けれど、自分の本心は決して吐こうとはせず、口から出る全ての言葉は真実だと思わせることに長けているズルい女です。

 本当に本当のことは知りたがらない女なのです。



 1125 キスがスキだったキミ

 私が横になっていると、キミはいつもすかさず私の上に飛び乗ってきて、いつも私の顔を舐め回した。キミの舌はザラザラしててとても痛かったから、私はいつも嫌がってた。キミは負けず嫌いだったから、私が嫌がれば嫌がるほど、夢中になって私を舐め回した。

 キミの鼻はいつも湿っていて、私の頬に顔くっつけてくると私は冷たさの余りビクンとなった。だから冬になると、キミが私の頬に顔を近づけるたび、私はいつも逃げ回ってた。キミは意地悪だったから、私が逃げれば逃げるほど、夢中になって私を追いかけた。

 2年前の今頃、そうやってキミと過ごしてたことが今では夢だったように感じます。その時の感覚を思い出したいから、もう一度、ダイスキなキミとキスしたい。



 1126 明日があるから

 とても悲しい出来事がありました。
 涙が出そうなほどに悲しい出来事でした。
 いつもの私なら泣いていました。
 でも泣きませんでした。
 涙を我慢してあえて笑ってみました。
 少しだけ元気が出た気がしました。



 1128 追いつめて、追いつめられて。

 今の自分に余裕があっても、決して手を抜いてはいけないんだなって。

 仕事に関してはとりあえず順調です。でも私は精神的にゆとりがあると自分に甘くなってしまう傾向にあるので、自分にある程度のプレッシャーを常に与えておかなきゃ、いつか泣きを見るんです。あえて窮地に追いやって、いつも締め切り前だと思って仕事をしなきゃ、全然進まないんです。典型的な追い込み型なので。最初が肝心ですからね。

 仕事中の私は密かにマゾだったりします。割と。



 1130 リトルパーム

 私の人差し指は彼女の小さな掌にすっぽりと包まれました。体温が高い彼女の掌からは命の鼓動が伝わってきて、まだ産まれて2ヶ月弱で首も据わってないけれど、彼女は一生懸命生きているんだということが解かりました。彼女の唇に顔を近づけると、彼女のほかほかした息が漏れていてくすぐったくなりました。

 毎日を単調に過ごしていて、死んだように生きている私に、彼女は命の息吹を与えてくれました。私は生き返らなければいけない。