赤と白の世界





 私はサトシが好きだ。だけどサトシはユキノが好きで、ユキノもサトシが好きで、そしてユキノは私の親友だった。サトシに恋心を打ち明けたい自分と、親友としてユキノを応援したい自分がいて、私は日々苦しい思いをしていた。

 サトシは毎日、空が茜色に変わる頃に、町の外れの丘の上、緋色の花が咲く木の下でユキノと待ち合わせをしていた。毎回毎回サトシはユキノに愛の告白をするのだけれど、そのたびにユキノは煮え切らない態度。間違いなく二人はお互いを意識し合っているのに、なかなか今以上の関係にならない。

 サトシはいつも帰る間際にその木から花の付いた枝を折って包装し、真っ赤な花束にしてユキノにプレゼントしていた。でもユキノは花束を受け取る時はいつも、ちょっと嬉しそうな恥ずかしそうな表情を一瞬して、それからすぐに哀しそうな表情をする。そんなユキノの肩をサトシはポンと軽く叩いて頷く。毎日その光景を少し離れたところから眺めている私は、ユキノにはきっと緋色の花に関する哀しい思い出があって、心の整理が付かず未だにサトシを受け入れられないこと、それでもサトシは全てを知った上で彼女が心を開くのを待っていることをなんとなく悟っていた。

 私はここにいるのに。
 伝えたい。伝えられない。届かない。届けたくても届けられない。行き場のないこの気持ちはふらふらと彷徨い、結局何処にも辿り着けずに再び私の元へ戻ってくる。

 肩を並べて帰っていく二人。ユキノが着ている真っ白なキャミソールワンピースに緋色の花束が映えて、とてもきれいに見える。ほんの少し離れているだけなのに、二人の存在はまるで、どんなに手を伸ばしても絶対に届かない空みたいに、遥か遠くにいるように感じる。

 私は二人の後ろ姿を遠くから見て切ない気持ちになりながら、茜色の空の下で静かに泣いた。




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